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Beauty Source キレイの魔法

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恋愛セミナー56【総角】

第四十七帖  <総角-1 あげまき> あらすじ

八の宮の一周忌の世話も、薫は親身に行ないます。
法会のための香を飾る紐を結びながら、父亡き後、よくも生き長らえたものと感慨深く思う姫達。
「総角結び(左右と上に輪を作る飾りに用いる結び方)にあなたとの長い愛の行く末を誓う約束を結び、
同じ場所で会えるように。」と大姫に詠みかける薫。
「貫くことさえできないもろい涙の玉のような私の命。愛の行く末などどうして誓えましょうか。」

大姫は恋の思いが自分に向けられると、こんな風に受け流してしまうので、薫は中の姫と匂宮について話します。
「匂宮は真剣なのです。中の姫は拒絶されていらっしゃいますが、本当のお気持ちはいかがなのでしょうか。」
「結婚など考えられませんが、妹は私より若いのでここで終わらせるのは残念に思っておりまして、どうなることやら。」

薫は思いあまってあの柏木の乳母・弁の君に相談してみます。
「八の宮のご遺言と姫達のお考えが違っているのは何故でしょう。世間の人と違って女性に心を寄せたことはなかった私が
姫達と縁ができ親しくしているのだから世の夫婦のようになりたいのです。他に違う相手がいらっしゃるのでは。」
「姫達も世間並みの方々とは違って結婚は考えたこともなく、まして八の宮が亡くなった後では頼る方もなく心細い限りでした。
大姫は気持ちを変えていらっしゃいませんが中の姫を浮気な匂宮さまではなく、薫さまにと思っておられるようです。」と弁の君。

「亡き八の宮のご遺言に従えばどちらの姫達のお世話をしてもよいのですが、他の方に心を移せない私なのです。
やはり大姫にお気持ちを聞いていただきたいのですが不器用な私はうまくお伝えすることができません。
匂宮のこともお任せくださるといいのですが。」
頼りない身の上の姫達と、薫のような申し分のない相手との縁を、弁の君は望ましいことと思っていますが、
差し出がましいことは言えません。

その夜、薫は山荘に泊まり、大姫と話をしています。
だんだんと気持ちが高ぶってくるのを強いて押さえつつ言葉を選ぶ薫。
薫の気持ちを察し、周りに女房を引き止めておこうとする大姫。
女房たちは強情にならなくても、と離れていったので周りはひっそりとしてしまいます。
恐くなって奥へ行こうする大姫。
「私を一人にするのですか。」と薫は几帳を引き上げ、大姫の衣をとらえました。

ほのかに照らしだされる大姫の髪も顔も、やはり言いようのない美しさでした。
薫は初めて垣間見たときからの思いを語りますが、大姫はそんな下心が隠されていたことを情けなく思います。
仏間から流れてくる香の匂いにやましさを感じる薫は、大姫の心がとけるまでと添い寝するに留めるのでした。

夜が明け、大姫はせめて早く薫を帰そうと急きたてます。
「有明の別れなど、いままで経験したこともないのに。」と嘆きつつ帰る薫。
女房の噂を聞いた中の姫は、眠っている大姫にかけた衣に、疑いようもないほど
薫の移り香が染みているのをいたわしく思うのでした。

恋愛セミナー56
1 薫と大姫  垣根を越えて

薫がついに行動を起こしました。
抱きしめつつも、それ以上のことをしないのは、薫が仏道修行に熱心だからという理由が面白いと思います。
夕霧も喪が明けていない落葉の宮をとらえていましたが、それはただ本人の拒絶にあったから。
薫も夕霧も亡き人の遺言通りに世話をしているという大義名分があるのですが、二人とも無理はできない性格。
「有明の別れ」、夜が明ける前に女性のもとを離れるのが恋する男性の嗜みなのですが、
「朝帰りなんてしたことないんだ。」という薫なのです。

大姫は女房たちから強情と思われるほど、薫の思いに知らぬふりをし続けました。
女房達にしてみれば、八の宮が生きていたときでさえ、世から見捨てられたような宇治の暮らし。
増して亡くなってしまった後では、ここにいては自分達でさえ生きてゆけないかもしれない。
そんなときに、降ってわいたような願ってもない縁談。
浮気な匂宮はともかく、美しく、身分たかく、しかも真面目な性格のどこに不服があるのか、
さっぱりわからないといったところでしょう。

大姫の気持ちはどうでしょう。
父・八の宮の遺言を守って宇治に骨を埋めるのが一番自分に合っている。
薫の聞いた父の遺言との錯誤は、自分より若くて美しい中の姫を娶せることで解消できる。
わずらわしい薫の思いを封じるにも、一石二鳥だと。

これは薫にしてみれば、納得できない、考えられない話。
恋の炎がなかなか点火しなかった分、一度ついた火を消すことなど容易にはできない。
しかも、匂宮への義理もある。
大姫の考えが少し甘かったかもしれません。

恋を経験してこなかったおくての薫、恋を頭だけで算段している大姫。
そして恋愛経験豊富な匂宮と、まだ姉の思惑も何も知らされていない中の姫。
四人はこれからどうなってゆくのでしょうか。


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